WireGuard は、軽量・高速・シンプルな設計を特徴とする VPN プロトコルです。 2020年に Linux カーネル 5.6 へ正式に取り込まれ、いまでは Tailscale をはじめ多くのVPN製品の土台になっています。
何が新しいのか
- コードが小さい … 実装が数千行程度と、数十万行規模になりがちな従来VPN(OpenVPN・IPsec)より桁違いに小さい。監査しやすく、攻撃面も狭い
- 暗号を交渉しない … 使う暗号方式(Curve25519、ChaCha20-Poly1305 など)を固定にして、古い方式へのダウングレードという定番の弱点を設計ごと排除した
- cryptokey routing … 「この公開鍵の相手には、このIPレンジを割り当てる」という公開鍵とIPの対応表が設定のすべて。証明書もユーザー名も出てこない
設定ファイルは数行で済み、接続も高速です。「VPNは重くて複雑」という常識を変えた技術と言えます。
従来のVPNプロトコルとの比較
| WireGuard | OpenVPN | IPsec | |
|---|---|---|---|
| 登場 | 2010年代後半 | 2001年 | 1990年代 |
| 実装規模 | 小さい | 大きい | 大きい(カーネル+複数デーモン) |
| 暗号 | 固定(モダンのみ) | 交渉あり | 交渉あり |
| 通信 | UDPのみ | TCP/UDP | ESP/UDP |
WireGuard「だけ」では足りない部分
WireGuard が定めるのは通信の暗号化だけで、鍵の配布・IPアドレスの割り当て・端末の追加削除・アクセス制御は自分で管理する必要があります。台数が増えるとここが重くなります。 この「面倒な部分」を自動化したのが Tailscale です。関係は「WireGuard=プロトコル、Tailscale=それを運用込みで使いやすくしたサービス」と押さえると混乱しません。
近い用語との違い
- Tailscale … WireGuard を土台にしたサービス層。鍵交換・NAT越え・アクセス制御を肩代わり
- SSL VPN … ブラウザ経由の方式。装置側の脆弱性が突かれる事故が続いた領域
- IPsec … 拠点間VPNの伝統的な標準
全体像は Tailscaleとは?VPNとの違い で扱っています。