公開鍵暗号は、公開鍵と秘密鍵のペアを使って暗号化や署名を行う仕組みです。 英語では public-key cryptography、非対称暗号(asymmetric cryptography)とも呼ばれます。代表的なアルゴリズムは RSA、ECDSA、Ed25519 などです。
2つの使い方——向きが逆
同じ鍵ペアでも、目的によって使う向きが逆になります。ここを押さえると一気に整理できます。
- 暗号化 … 公開鍵で暗号化 → 秘密鍵で復号。「誰でも送れるが、開けるのは持ち主だけ」
- 署名 … 秘密鍵で署名 → 公開鍵で検証。「作れるのは持ち主だけ、確かめるのは誰でもできる」
電子署名、デジタル証明書、Passkeys、SSH鍵認証は、すべて後者(署名)の応用です。
共通鍵暗号との違いと、実際のTLS
| 公開鍵暗号 | 共通鍵暗号 | |
|---|---|---|
| 鍵 | 公開鍵+秘密鍵のペア | 1つの鍵を双方で共有 |
| 速度 | 遅い | 速い |
| 事前の鍵共有 | 不要(公開鍵は配ってよい) | 必要(ここが難題) |
実際の HTTPS(TLS)は両方の合わせ技です。最初だけ公開鍵暗号で「共通鍵の材料」を安全に交換し、本文は速い共通鍵暗号で流す——このハイブリッド構成が標準です。
押さえておきたい注意点
- 公開鍵だけでは「誰の鍵か」が分からない … なりすまし対策には、公開鍵と持ち主を結びつけるデジタル証明書が必要
- 秘密鍵の漏えいは最重度の事故 … 漏れた瞬間に暗号も署名も信頼が崩れる。鍵の保管と失効手順までがセット
- 耐量子暗号への移行が始まっている … 量子コンピュータで現行方式が破られる将来に備え、NIST が2024年に耐量子暗号(ML-KEM 等)を標準化した。長期運用のシステムでは頭に入れておきたい動き