先に要点
Webサイトやアプリは、見た目がきれいでも、情報の置き場所が分かりにくいと使われません。
「料金はどこにあるのか」「問い合わせ前に何を読めばよいのか」「管理画面で設定を変えたいのに見つからない」といった迷いは、デザインの装飾より前に、情報の構造で起きていることが多いです。
そこで必要になるのが情報設計です。
情報設計は、ページや機能をただ並べる作業ではありません。ユーザーが目的に合わせて情報を探し、理解し、次の行動へ進めるように、分類、ラベル、ナビゲーション、導線を整える作業です。
この記事では、情報設計をWebサイトやアプリ制作の実務で使う前提で、何を決めるのか、ワイヤーフレームやサイトマップと何が違うのか、どこで失敗しやすいのかを整理します。
情報設計とは
情報設計とは、情報や機能をユーザーが理解しやすい形で整理し、探しやすく、使いやすくするための設計です。
英語では Information Architecture、略して IA と呼ばれます。
Nielsen Norman Group は、情報設計をサイトのコンテンツや機能の関係を決める構造、組織化、名前付けの問題として扱っています。VA.gov Design System でも、情報設計は情報の組織化、ラベル、ナビゲーションを通じて、人が必要なものを見つけ、今いる場所と次に行ける場所を理解できるようにするものとして説明されています。
つまり情報設計で考えるのは、単に「メニューをどこに置くか」ではありません。次の6つをまとめて考えるのが情報設計です。
分類
情報をどう分けるか
情報をどう分類するか。
名前
呼び方を決める
カテゴリ名やボタン名をどう付けるか。
つながり
ページ間の移動
どのページからどのページへ進めるか。
探し方
一覧・検索・絞り込み
一覧、検索、絞り込みをどう用意するか。
現在地
今いる場所を伝える
今いる場所をどう伝えるか。
利用者の幅
初めての人と慣れた人
初めて来た人と慣れた人の探し方をどう両立するか。
なぜ必要なのか
情報設計が弱いと、ユーザーは目的の情報にたどり着く前に疲れます。
例1
コーポレートサイト
サービス内容、料金、導入事例、問い合わせ、会社情報、採用情報が混ざっていると、訪問者はどこから見ればよいか迷います。
例2
SaaSの管理画面
契約、メンバー、権限、通知、請求、API設定が似た名前で散らばっていると、設定変更のたびに探すことになります。
例3
小さなLP
情報設計が必要なのは、ページ数が多いサイトだけではありません。最初に何を伝え、どの順番で不安を解消し、どこで行動してもらうかを決める必要があります。
| 情報設計が弱い状態 | 起きやすいこと |
|---|---|
| カテゴリが作り手都合 | ユーザーが探す言葉とずれる |
| ラベルが曖昧 | クリック先を予想できない |
| 導線が多すぎる | 次に何をすればよいか迷う |
| 重要情報が深い階層にある | 読まれる前に離脱される |
| 一覧や検索が弱い | 情報量が増えたときに破綻する |
情報設計は、見た目の前に「迷いの原因」を減らすための土台です。
情報設計で決めること
情報設計では、主に次のようなことを決めます。
| 項目 | 決めること |
|---|---|
| 分類 | 情報や機能をどのまとまりに分けるか |
| ラベル | カテゴリ名、メニュー名、ボタン名、見出しをどう呼ぶか |
| 階層 | どの情報を上位に置き、どの情報を詳細に置くか |
| ナビゲーション | グローバルナビ、サイドバー、フッター、パンくずをどう使うか |
| 導線 | 次に読ませたいページ、行動させたい場所へどうつなぐか |
| 検索・絞り込み | 情報量が多いときにどう探せるようにするか |
| 状態 | 空状態、エラー、権限なし、未設定状態をどう見せるか |
情報設計は、むしろ重要度の低いものを下げ、似たものをまとめ、ユーザーの目的に沿って見せる順番を決める作業です。
サイトマップやワイヤーフレームとの違い
情報設計は、サイトマップやワイヤーフレームと混同されがちです。
| 用語 | 役割 |
|---|---|
| 情報設計 | 情報の分類、ラベル、構造、探し方を決める考え方 |
| サイトマップ | ページやURLの全体構造を一覧化する資料 |
| ワイヤーフレーム | 画面上で情報をどう配置するかを表す構成案 |
| ナビゲーション | ユーザーが移動するためのメニューやリンク |
情報設計で決めた構造が、サイトマップやワイヤーフレームを経て画面になる、という順番で見ると関係がつかみやすくなります。
サイトマップとの違い
URL一覧より広い
sitemap.xml は検索エンジン向けにURL一覧を伝えるファイルですが、制作現場でいうサイトマップはページ構造を整理する資料を指すこともあります。どちらも「全体像を整理する」点では近いですが、情報設計はURL一覧よりも広く、ユーザーがどう理解し、どう探すかまで含めます。
ワイヤーフレームとの違い
結果を画面に落とす資料
ワイヤーフレーム は情報設計の結果を画面に落とすための資料です。情報設計で「料金、機能、導入事例、FAQ、問い合わせをどう並べるか」を決め、そのあとワイヤーフレームで「画面上にどう置くか」を検討する、と考えると分かりやすいです。
詳しいワイヤーフレームの考え方は、ワイヤーフレームとは?デザイン前に画面構成を整理する理由 で整理しています。
実務での進め方
情報設計は、いきなりメニュー名を考えるより、ユーザーの目的から逆算すると進めやすいです。
情報設計の進め方
- 1誰が使うのかを整理する
利用者を思い浮かべるところから始める。
- 2目的を書き出す
その人が達成したい目的を書き出す。
- 3棚卸しする
既存ページや機能を棚卸しする。
- 4グループに分ける
情報をグループに分ける。
- 5ラベルを付ける
ユーザーの言葉に近いラベルを付ける。
- 6導線を分ける
主要導線と補助導線を分ける。
- 7構造に落とす
サイトマップや画面遷移に落とす。
- 8画面で確認する
ワイヤーフレームで確認する。
- 9探せるかレビューする
実際に探せるかレビューする。
作り手の分類
採用サイトで分けたくなる形
作り手は「制度」「募集要項」「カルチャー」「社員紹介」と分けたくなります。
応募者が探すこと
実際に知りたいこと
「未経験でも応募できるか」「給与はどれくらいか」「リモート勤務できるか」「どんな人と働くのか」を探しているかもしれません。
このズレを見つけるのが情報設計の大事な仕事です。
社内の部署名や作り手の分類ではなく、利用者が探す言葉、判断する順番、迷いやすい点を基準に構造を作ります。
よくある失敗
情報設計でよくある失敗は、作り手の都合がそのまま表に出ることです。
ラベル
名前の付け方の失敗
社内組織の名前をそのままカテゴリ名にする。「その他」「サービス」「ソリューション」のような曖昧なラベルに逃げる。
まとまり
整理の失敗
似たページが複数あり、どれを読めばよいか分からない。初心者向け情報と既存利用者向け情報が混ざる。
量と導線
見せ方の失敗
メニュー項目を増やしすぎる。検索や絞り込みがなく、一覧が長くなる。重要な行動導線がフッターや深い階層に埋もれる。
特に多い失敗です。ユーザーにとって大事なのは、情報が存在することだけではありません。必要なタイミングで見つけられ、意味が分かり、次の行動へ進めることです。
レビューで見るポイント
情報設計をレビューするときは、見た目よりも次を確認します。
目的
目的を達成できるか
初めて来た人が主要な目的を達成できるか。問い合わせ、登録、購入などの行動導線が自然か。
言葉
分類と名前
カテゴリ名がユーザーの言葉に近いか。似た情報が分散していないか。
移動
たどり着けるか
重要なページへ迷わず少ない手順で行けるか。現在地と戻り方が分かるか。
量と将来
増えても保てるか
一覧、検索、絞り込みが情報量に見合っているか。将来ページが増えても破綻しないか。
実務では、関係者だけで眺めるより、実際の利用者に近い人へ「この情報を探してください」と頼む方が早く問題が見つかります。カードソートやツリーテストのような手法を使うこともありますが、小規模なサイトなら、まずは数人に探してもらうだけでも十分な発見があります。
AIで画面案を作るときほど必要
最近はAIに「LPを作って」「管理画面を作って」と頼むと、見た目の整った画面案がすぐ出ます。
ただ、AIが作った画面は、情報設計まで正しいとは限りません。
AIが得意なことと、入力しない限り分からないこと
AIが得意なこと
それらしい見出し、カード、ボタンを並べること。初稿作りには便利です。
入力しない限り分からないこと
実際のユーザーが何を探しているか、社内の業務フローでどの順番が自然か、法務やサポート上どの情報を先に見せるべきか。
そのため、AIで初期案を作る場合でも、次は人間が確認した方が安全です。
- ユーザーの目的に沿った順番になっているか
- メニュー名が曖昧ではないか
- 重要情報が下に埋もれていないか
- 同じ意味のページやボタンが重複していないか
- 画面単体ではなく前後の導線がつながっているか
情報設計の判断をAIに丸投げすると、きれいなのに迷う画面になりやすいです。
情報設計に関するよくある質問
Q. 情報設計とUIデザインの違いは?
A. 情報設計は 何を、どこに、どう分類するか の構造設計、UI デザインは 見た目と操作感 のデザイン。情報設計が先、その上で UI を作る、という順序です。
Q. カードソーティングとは何ですか?
A. ユーザーに 情報カード を配って分類してもらう調査手法です。ユーザーの認識する分類 を可視化でき、メニュー構造やカテゴリ設計に活かせます。
Q. パンくずリストは必須ですか?
A. 必須ではありませんが、階層が深いサイトでは有効です。Eコマース、ニュースサイト、技術ドキュメント、で特に効果的。現在地が分かる + 戻りやすい で迷いが減ります。
Q. グローバルナビゲーションは何項目までが良い?
A. 決まった上限はありません。ミラーの法則(短期記憶7±2)が根拠に挙げられることがありますが、メニューは見ながら選ぶものなので、記憶の上限をそのまま当てはめるのは適切ではありません。項目数より、ラベルが利用者の言葉で区別できるか、優先度の低いものを下げられているかを見ます。多くなる場合は ドロップダウン や メガメニュー で階層化します。
Q. ファセットナビゲーションはいつ使う?
A. 大量の商品/記事を絞り込む必要がある場合(EC、不動産、ニュース)。価格、カテゴリ、属性などのフィルタを横断検索できる仕組みです。SEO 影響も大きいので、設計には注意が必要です。
Q. ユーザーテストはどんな質問をしますか?
A. このサイトでXを探してください この情報を見つけてもらえますか、と具体的なタスクを与え、どこで詰まったか 何分かかったか 迷った理由 を観察します。Nielsen Norman Group は、5人程度のテストで多くの使い勝手の問題(約85%)が見つかるという目安を示しています(条件によって変わります)。
Q. AI で情報設計はできますか?
A. 初稿生成は可能ですが、ユーザー目線の判断 業務理解 競合差別化 などの最終判断は人間です。AI は 叩き台 + アイデアブースター、判断は人間、という分担が現実的です。
まとめ
情報設計は、Webサイトやアプリで情報を分類し、名前を付け、ユーザーが迷わず目的にたどり着ける構成を作る考え方です。
ナビゲーション、カテゴリ、ラベル、検索、一覧、導線、階層を整えることで、見つけやすさと使いやすさが大きく変わります。
ワイヤーフレームやデザインに入る前に情報設計を整理しておくと、見た目の議論だけに流されにくくなります。
実務では、作り手の分類ではなく、ユーザーが探す言葉、判断する順番、迷う場所を基準にすることが大切です。
画面を作る前に「この人は何を探しに来るのか」「どの言葉なら迷わないか」「次にどこへ進めばよいか」を決める。
その地味な整理が、使いやすいWebサイトやアプリの土台になります。
参考リンク
- Nielsen Norman Group: The Difference Between Information Architecture and Navigation
- VA.gov Design System: Information architecture
- Figma: What is information architecture?
- Nielsen Norman Group: Why You Only Need to Test with 5 Users