ソフトウェア 公開日 2026.04.22 更新日 2026.04.22

CACとは?顧客獲得コストと広告費を見る基本

CACとは何かを、顧客獲得にかかったコストとして、広告費だけでなく営業費や制作費を含める考え方、LTVとの比較、回収期間まで整理します。

先に要点

  • CACは、顧客を1人獲得するためにかかった費用を見る指標です。
  • 広告費だけでなく、営業費、制作費、代理店費、ツール費、人件費を含めるかで数字が変わります。
  • CACは単独で良し悪しを決めず、LTV、粗利、回収期間、顧客層と一緒に見ます。
  • 全体平均だけでなく、広告、検索、紹介、営業など流入元ごとに分けると改善点を探しやすくなります。

Web広告やSaaS運営では、「1件獲得できた」「登録者が増えた」という数字だけでは十分ではありません。
その顧客を獲得するために、いくら使ったのかまで見ないと、伸びているように見えて実は赤字が広がっていることがあります。

そこで使うのがCACです。
CACは、顧客を1人獲得するためにかかったコストを見る指標です。

この記事では、CACとは何か、広告費だけで見てよいのか、LTVとどう比べるのか、実務で広告運用や営業施策を見るときに何を確認すべきかを整理します。

CACとは

CACCustomer Acquisition Cost の略で、日本語では顧客獲得コスト顧客獲得単価と呼ばれます。
ざっくり言うと、新しい顧客を1人獲得するためにかかった費用です。

基本形は次の通りです。

CAC = 顧客獲得に使った費用 ÷ 新規顧客数

たとえば、1か月で広告や営業に300,000円使い、その月に新規顧客を30人獲得したなら、CACは10,000円です。

ただし、ここで大切なのは「顧客獲得に使った費用」に何を含めるかです。
広告管理画面に出ている広告費だけを見るのか、営業人件費や制作費まで含めるのかで、CACは大きく変わります。

広告費だけを見ると何が足りないか

広告費だけでCACを見ると、数字が低く見えやすくなります。

費用 CACに含めるか検討するもの
広告費 検索広告、SNS広告、ディスプレイ広告など
制作費 バナー、LP、動画、記事、ホワイトペーパーなど
代理店費 広告運用代行、制作会社、コンサル費用など
ツール費 CRM、MA、計測ツール、メール配信ツールなど
営業費 営業人件費、インサイドセールス、商談、歩合など
キャンペーン費 割引、紹介特典、イベント出展、ウェビナーなど

たとえば、広告費だけなら100,000円で10人獲得できたのでCACは10,000円に見えます。
しかし、LP制作費、広告運用代行費、営業対応の人件費まで含めると、実際の獲得費用は250,000円かもしれません。その場合、CACは25,000円です。

どちらが正しいというより、目的によって使い分けます。
広告運用の比較なら広告費ベースでも役立ちますが、事業として獲得投資を増やしてよいかを見るなら、広めに費用を含めたCACが必要になります。

計算するときの基本

CACを計算するときは、期間と対象をそろえます。

月次CAC = その月の獲得費用 ÷ その月の新規顧客数
チャネル別CAC = そのチャネルの獲得費用 ÷ そのチャネルからの新規顧客数

見るときの注意点は、登録者数ではなく「顧客数」を使うことです。
無料登録、資料請求、問い合わせ、商談化、有料契約、初回購入のどれを顧客と呼ぶかで意味が変わります。

たとえば、無料登録が100件あっても、有料契約が10件なら、有料顧客ベースのCACは10件で割る必要があります。
広告管理画面では獲得単価が安く見えても、実際の有料化まで見ると高くなることがあります。

LTVと一緒に見る

CACはLTVと一緒に見ることが多いです。
LTVは、顧客1人が利用期間全体でどれくらいの価値をもたらすかを見る指標です。

LTVがCACより十分に大きいか

たとえば、CACが8,000円でも、粗利ベースのLTVが40,000円あるなら、獲得投資として成立する可能性があります。
反対に、CACが5,000円でも、LTVが4,000円しかないなら、顧客を増やすほど利益が減るかもしれません。

ただし、LTVとCACの比率だけで判断するのは危険です。
回収までに何か月かかるのか、解約率が悪化していないか、広告費を増やしたときにCACが上がらないか、粗利が十分に残るかも確認します。

LTVの見方は、LTVとは?顧客1人あたりの価値をどう見る指標なのか で整理しています。

回収期間も見る

CACを見るときは、回収期間も重要です。
回収期間は、顧客獲得に使った費用を、顧客から得られる粗利で何か月で回収できるかを見る考え方です。

CAC回収期間 = CAC ÷ 月間の顧客あたり粗利

たとえば、CACが24,000円で、顧客1人あたりの月間粗利が4,000円なら、回収期間は6か月です。
同じLTVでも、回収が早い事業と遅い事業では、資金繰りや広告投資の判断が変わります。

特にSaaSやサブスクリプションでは、先に広告費や営業費が出て、売上は後から積み上がります。
そのため、LTVが十分に見えても、回収まで長すぎると成長の途中で資金が苦しくなることがあります。

流入元ごとに分けて見る

CACは全体平均だけで見ると、どこに問題があるのか分かりにくくなります。

分け方 見ること
広告別 検索広告、SNS広告、動画広告で獲得効率が違うか
流入元別 検索、紹介、広告、イベント、営業で違いがあるか
顧客層別 個人、小規模企業、大企業で獲得費用が違うか
プラン別 低価格プランと高価格プランで採算が違うか
時期別 キャンペーン前後でCACが変わったか

たとえば、全体のCACが12,000円でも、検索経由は5,000円、SNS広告は30,000円、紹介は2,000円かもしれません。
この場合、全体平均だけを見て広告費を増やすと、効率の悪いチャネルに予算を入れてしまう可能性があります。

CACは「安ければよい」だけではありません。
高いCACでも、LTVが高く解約しにくい顧客が取れるなら、事業としては成立することがあります。逆に、CACが低くても、すぐ離れる顧客ばかりなら注意が必要です。

よくある誤解

広告管理画面の獲得単価がCACである

広告管理画面の数字は便利ですが、広告費だけを元にしていることが多いです。
制作費、営業対応、ツール費、代理店費を含めると、実際のCACは高くなることがあります。

問い合わせ1件あたりの費用をCACと呼んでよい

問い合わせや資料請求は、まだ顧客ではありません。
問い合わせ単価を見ること自体は大切ですが、有料契約や購入まで進んだ人数で割るCACとは分けて考えます。

CACは低いほど必ず良い

CACは低い方が効率的に見えますが、質の低い顧客ばかり獲得している場合もあります。
継続しない、単価が低い、サポート負荷が高い、紹介につながらない顧客なら、低CACでも事業には効きにくいです。

LTVが高ければCACをいくらでも上げてよい

LTVが高く見えても、推定が楽観的すぎる、回収期間が長い、粗利が低い、チャネルを拡大すると効率が落ちる、といった問題があります。
CACを増やすときは、小さく試して、実際の回収と継続率を確認します。

実務での確認手順

CACを見るときは、次の順で整理すると扱いやすくなります。

  1. 何を顧客と呼ぶかを決める
  2. 対象期間を決める
  3. CACに含める費用を決める
  4. 新規顧客数を同じ期間で集計する
  5. 流入元や顧客層ごとに分ける
  6. LTVや粗利と比べる
  7. 回収期間を見る
  8. 広告費を増やした後も同じ効率が続くか確認する

重要なのは、定義を固定して追い続けることです。
ある月は広告費だけ、別の月は営業費込みで計算すると、改善したのか計算方法が変わったのか分からなくなります。

まとめ

CACは、顧客を1人獲得するためにかかった費用を見る指標です。
広告費だけでなく、制作費、営業費、代理店費、ツール費、人件費まで含めるかで数字が変わります。

CACは単独で良し悪しを決めるものではありません。
LTV、粗利、回収期間、解約率、顧客層、流入元と一緒に見ることで、広告費を増やすべきか、営業活動を見直すべきか、価格やオンボーディングを改善すべきかが判断しやすくなります。

CACを見る目的は、広告費を削ることだけではありません。
どの顧客を、どの方法で、どれくらいのコストで獲得すると事業が健全に伸びるのかを見極めることです。


参考リンク

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