先に要点
- IPv4とIPv6は、どちらも 機器をネット上で識別する「IPアドレス」の規格。いちばんの違いは 使えるアドレスの数です。
- IPv4は 32ビット(約43億個)、IPv6は 128ビット(事実上無限)。IPv4が足りなくなった(枯渇)ことがIPv6誕生の理由です。
- 表記も違います。IPv4は
192.0.2.1のようなドット区切りの10進数、IPv6は2001:db8::1のようなコロン区切りの16進数です。 - 今は 両方が共存(デュアルスタック) しています。すぐ片方に統一されるわけではなく、サービス運用では両対応を意識するのが現実的です。
IPv4とIPv6って何が違うの? どっちを使えばいいの? ── ネットワークの話で必ず出てくるテーマですが、ビット数やアドレス数の話になると急に分かりにくくなります。
この記事では、IPv4とIPv6の違いを、アドレスの数・表記・生まれた背景・NATの要否・共存(デュアルスタック)・実務での注意点という順で、初心者にも分かるように整理します。一般論で終わらせず、実際に運用で気をつける点まで踏み込みます。
IPv4とIPv6とは
どちらも IP(Internet Protocol)アドレス、つまり ネットワーク上で機器を識別するための住所の規格です。郵便でいう住所のようなもので、これがないとデータの宛先を決められません。
- IPv4 ── 1980年代から使われてきた、現在も主流のバージョン。
- IPv6 ── IPv4のアドレス不足を解決するために作られた新しいバージョン。
名前は似ていますが、IPv4とIPv6は直接そのままでは通信できません(互換性がない)。この点が、後で出てくる「共存」の話につながります。
いちばんの違い: アドレスの長さと数
最大の違いは、アドレスを表すビット数=使えるアドレスの数です。
IPv4 = 32ビット
アドレスは 約43億個(2の32乗)。世界中の人・機器に配るには まったく足りない。
IPv6 = 128ビット
アドレスは 約340澗(かん)個(2の128乗)。事実上無限で、枯渇の心配がない。
43億と聞くと多そうですが、スマホ・PC・サーバー・IoT機器まで含めると、世界の機器数はとっくにこれを超えています。IPv4は数が足りない ── これがすべての出発点です。
表記の違い
見た目もはっきり違うので、見分けるのは簡単です。
| IPv4 | IPv6 | |
|---|---|---|
| 区切り | ドット . | コロン : |
| 表記 | 10進数(0〜255)を4つ | 16進数を8ブロック |
| 例 | 192.0.2.1 | 2001:db8:0:0:0:0:0:1 |
| 省略 | なし | 連続する0を :: で省略可 |
IPv6は長いので、連続するゼロのブロックを :: で1回だけ省略できます。たとえば 2001:db8:0:0:0:0:0:1 は 2001:db8::1 と書けます。各ブロック先頭のゼロも省けます。なお、おなじみの localhost はIPv4では 127.0.0.1、IPv6では ::1 です。
なぜIPv6が生まれたのか(IPv4枯渇)
IPv6が作られた直接の理由は、IPv4アドレスの枯渇です。インターネットの普及で約43億個では足りなくなり、新規に配れるIPv4アドレスの在庫は世界的に尽きました。
この枯渇を 延命してきたのが NAT(ネットワークアドレス変換) です。社内や家庭ではプライベートIPアドレスを使い、外に出るときだけ少数のグローバルIPに変換することで、1つのグローバルIPを大勢で共有してきました。NATのおかげでIPv4はまだ現役ですが、根本解決はアドレス空間そのものを広げること=IPv6でした。
IPv4とIPv6の主な違い(まとめ)
アドレス数以外にも、設計上の違いがあります。
注意したいのは、「IPv6だから速い・安全」と単純には言えないことです。よく「IPv6は速い」と言われますが、それは多くの場合 IPv6 IPoE という新しい接続方式が混雑しにくいからで、IPv6という規格そのものが原理的に速いわけではありません。セキュリティも、IPsecへの考慮はありますが「IPv6にすれば安全」ではなく、設定とファイアウォールは引き続き必要です。
IPv4とIPv6は「共存」する(デュアルスタック)
ここが実務でいちばん大事な点です。IPv4とIPv6は互換性がないので、当面は両方を同時に動かして共存させます。これを デュアルスタック と呼びます。1台の機器・サーバーがIPv4アドレスとIPv6アドレスの両方を持ち、相手に合わせて使い分けます。
IPv4とIPv6は「日本語しか話せない人」と「英語しか話せない人」のようなもので、そのままでは直接会話できません。だから当面は 両方の言語を話せる(=両方のアドレスを持つ) ようにしておき、相手に合わせて使い分けます。これがデュアルスタックです。
たとえばWebサイトをIPv6でも見られるようにするには、DNSにIPv4向けの A レコードに加えて、IPv6向けの AAAA(クワッドエー)レコードを用意します。ブラウザは両方を試し、つながる方(多くはIPv6を優先)で接続します。
実務で気をつけること
サービスを運用する側として、IPv6時代に押さえておきたい点です。
- 両対応を前提にする ── 利用者はIPv4とIPv6が混在します。どちらか片方だけ想定すると、一部の利用者だけつながらない、という事故になります。
- アクセス制限・許可リストはv6も書く ── ファイアウォールやアプリのIP制限をIPv4だけで書くと、IPv6経由のアクセスが素通り、あるいは逆に正規利用者が弾かれます。両方のレンジを設定します。
- ログのIP形式に注意 ── アクセスログにIPv6アドレスが混じります。集計やGeoIP、不正検知の処理がIPv6形式を正しく扱えるか確認します。
- 表記ゆれに注意 ── 同じIPv6でも
::省略の有無で文字列が変わります。文字列一致で比較せず、正規化してから扱います。 - localhostの違い ── ローカル接続が
127.0.0.1(v4)か::1(v6)かで、設定や接続許可がかみ合わずハマることがあります。
移行は進んでいるのか
IPv6への移行は 少しずつ進行中です。モバイル回線や大手サービス、家庭向け回線ではIPv6対応が広がり、IPv6経由のトラフィックは年々増えています。一方で、世の中の膨大なIPv4資産がすぐに消えるわけではなく、当面はデュアルスタックでの共存が続くというのが現実的な見方です。
つまり、「どちらか一方を選ぶ」というより、新しく作るものはIPv6にも対応させ、IPv4とあわせて両方面倒を見るのが、これからの基本姿勢になります。
IPv4とIPv6に関するよくある質問
Q. IPv4とIPv6の一番の違いは何ですか?
A. 使えるアドレスの数です。IPv4は32ビットで約43億個しかなく、すでに枯渇しています。IPv6は128ビットで事実上無限のアドレスを持ち、枯渇の心配がありません。表記も、IPv4は 192.0.2.1 のような10進ドット、IPv6は 2001:db8::1 のような16進コロンで区別できます。
Q. IPv5は存在しないのですか?
A. 「IPv5」として一般利用されているものはありません。バージョン番号5は実験的なプロトコルに割り当てられた経緯があり、次の本流バージョンとしてIPv6が標準化されました。そのため、IPv4の次が一気にIPv6になっています。
Q. IPv6にすると通信は速くなりますか?
A. 規格そのものが原理的に速いわけではありません。「IPv6は速い」と言われるのは、主に日本の家庭向け回線で IPv6 IPoE という新しい接続方式が混雑を避けやすいためです。古いIPv4 PPPoE方式が混む時間帯でも、IPv6 IPoEは快適なことが多い、という文脈の話です。
Q. IPv6ではNATは不要なのですか?
A. アドレスが豊富なので、IPv4のように「不足を補うためのNAT」は原則不要で、端末に直接グローバルアドレスを付けられます。ただし、それは「外部から直接届く」ことも意味するため、ファイアウォールでの保護はIPv4以上に重要です。NATが事実上の壁になっていたIPv4の感覚のままだと危険です。
Q. IPv4とIPv6はそのまま通信できますか?
A. できません。両者は互換性がないため、直接は通信できません。そのため当面は両方を同時に動かす デュアルスタック で共存させ、相手に合わせて使い分けます。古い機器とのつなぎには変換技術もありますが、基本はデュアルスタックでの両対応が現実的です。
Q. 自分のサイトをIPv6対応にするには何が必要ですか?
A. サーバーやロードバランサーがIPv6アドレスを持ち、DNSにIPv6向けの AAAA レコードを追加するのが基本です。あわせて、ファイアウォールやアプリのIP制限・ログ集計がIPv6形式を正しく扱えるかも確認します。IPv4向けの設定だけ残っていると、IPv6経由のアクセスで想定外の挙動になることがあります。
参考リンク
- 総務省: IPv6 情報サイト(一般向け解説)
- JPNIC: IPアドレスとAS番号
- MDN: IPv6