セキュリティ 公開日 2026.09.13 更新日 2026.10.30

KEVカタログで脆弱性対応の優先度を決める|CVSSとの違い、期限の読み方、自社の一覧との突き合わせ方

KEVカタログは、実際に悪用が確認された脆弱性をCISAがまとめた一覧です。載る条件、CVSSやEPSSとの違い、2026年6月の指令BOD 26-04で決まる期限の読み方を一次情報で整理し、2026年9月11日版の1,709件を集計した数字と、自社の脆弱性の一覧と突き合わせるコマンドを紹介します。

目次(23項目)

先に要点

  • KEV カタログは、米国の CISA が公開している「実際に悪用されたことが確認された脆弱性」の一覧です。CVSS が表す「深刻さ」とは別の、「もう攻撃に使われている」という情報を持っています。
  • 2026年9月11日版のカタログを集計すると、掲載は 1,709件、そのうちランサムウェアでの利用が確認されているものは360件でした。2026年は9月11日までに225件が追加されています。
  • 各項目の期限(dueDate)は、2026年6月10日に出た指令 BOD 26-04 の表で決まります。インターネットに公開された機器を完全に乗っ取られる種類なら3日で、侵害されていないかの調査もあわせて求められます。
  • 米国の連邦機関向けの期限ですが、考え方はそのまま使えます。自社の脆弱性の一覧と KEV を突き合わせるコマンドと、優先順位の付け方を載せます。

脆弱性スキャナを回すと、数十〜数百件の CVE が並ぶことがあります。CVSS の点数で上から順に対応しようとしても、「9.8 が何十件もある」「7.5 だけど話題になっている」といった状態になり、どれから手をつけるべきか決めきれません。

このときの判断材料として使えるのが、CISA の KEV(Known Exploited Vulnerabilities)カタログです。この記事は、KEV に載る条件、CVSS や EPSS との違い、期限の読み方を一次情報で整理し、実際のカタログを集計した数字と、自社の一覧と突き合わせる手順をまとめます。

KEV に載る条件

CISA は KEV カタログを「実環境で悪用された脆弱性の権威ある情報源」と位置づけていて、次の3つをすべて満たしたものだけを載せます。

条件 中身
CVE 番号がある CVE プログラムで番号が割り当てられている
悪用の確かな証拠がある 攻撃者が許可なくコードを実行した、または実行を試みたという信頼できる証拠がある。スキャンや研究目的の実証コードは含まない
対処の方法がはっきりしている 「提供元の手順に従って更新する」など、取るべき行動がある
2つ目の条件が重要です

「攻撃コードが公開された」だけでは載りません。実際の攻撃で使われた証拠が求められます。

CVSS・EPSS・KEV は何が違うか

脆弱性の優先度付けでよく使われる3つの情報を並べます。

表しているもの 変わるか
CVSS の基本値 脆弱性そのものの深刻さ 基本的に変わらない
EPSS 今後30日以内に悪用される確率の推定(0〜1) 毎日更新される
KEV 悪用が確認されたという事実 確認されたものが随時追加される
CVSS の基本値だけでリスクを決めない

CVSS を策定している FIRST は、CVSS v4.0 のユーザーガイドで、基本値は深刻さを測るためのもので、それだけでリスクの評価に使うべきではないと明記しています。攻撃の状況(脅威の指標)や自社の環境(環境の指標)で補うよう求めています。

KEV の位置づけ

攻撃の状況のもっとも確かな部分

KEV は、この「攻撃の状況」のうち、もっとも確かな部分を担う情報だと考えると位置づけが分かりやすくなります。

EPSS の位置づけ

「次に危ないもの」を探す

EPSS は確率の推定なので、まだ悪用が確認されていないものの中から「次に危ないもの」を探すのに向いています。

カタログの中身

カタログは Web ページのほか、CSV と JSON で配布されています。JSON の各項目には、主に次の値が入っています(CISA が公開しているスキーマより)。

項目 中身
cveID CVE 番号
vendorProject・product 提供元と製品名
dateAdded カタログに追加された日
dueDate 米国の連邦機関に求められる対応期限
requiredAction 取るべき対応
knownRansomwareCampaignUse ランサムウェアの攻撃での利用が確認されていれば Known、そうでなければ Unknown
notes 参考情報のリンクなど
cwes 弱点の種類(CWE 番号)

数字で見る KEV(2026年9月11日版を集計)

JSON の全件を集計すると、次のようになりました。

項目 値
掲載件数 1,709件
ランサムウェアでの利用が Known 360件(約21%)
2026年の追加(9月11日まで) 225件。月あたり17〜31件

追加された年ごとの件数は、2021年が311件、2022年が555件、2023年が187件、2024年が186件、2025年が245件でした。カタログが作られたのは2021年なので、最初の2年には過去の脆弱性がまとめて登録されています。

ランサムウェアでの利用(1,709件中) Known 360件(約21%) Unknown 追加された年ごとの件数 2021年 311 2022年 555 2023年 187 2024年 186 2025年 245 2026年 225(9月11日まで)
2026年9月11日版のカタログ(JSON)を集計

提供元ごとの件数では、Microsoft が388件で最も多く、Cisco(97件)、Apple(94件)、Adobe(81件)、Google(74件)と続きます。

提供元ごとの件数(上位5社) Microsoft 388 Cisco 97 Apple 94 Adobe 81 Google 74

目を引くのは直近の追加です。2026年9月の追加分には、ConnectWise ScreenConnect、GitLab、JFrog Artifactory、Citrix NetScaler、MikroTik RouterOS のほか、LiteLLM や Starlette、Kestra も入っていました。ネットワーク機器や OS だけでなく、開発者が自分で立てるサーバーやライブラリも普通に載るということです。LiteLLM は10月21日にも、版を固定していなかった環境に認証情報を盗む版が配られており、確認と復旧の記事にまとめています。

Unknown は「ランサムウェアに使われていない」ではない

knownRansomwareCampaignUse の Unknown は、利用が確認されていないという意味です。使われていないことの証明ではないので、Known の項目だけを優先するような絞り込みはしないでください。

期限(dueDate)の読み方

期限を決めているのは BOD 26-04

KEV の期限は、CISA が2026年6月10日に出した拘束力のある運用指令 BOD 26-04(Prioritizing Security Updates Based on Risk)に基づいています。この指令で、KEV を作ったときの BOD 22-01 は廃止されました。

BOD 26-04 は、期限を CVSS の点数ではなく、次の4つの組み合わせで決めます。

観点1

公開されているか

認証なしでインターネットなどから届く状態か。

観点2

KEV に載っているか

悪用が確認された脆弱性の一覧に入っているか。

観点3

攻撃を自動化できるか

たとえば、遠隔からコードを実行できる実証コードが公開されていて、確実に動くか。

観点4

技術的な影響

悪用されたときに機器を完全に制御されるか、一部にとどまるか。ログイン情報が漏れる脆弱性は「完全」とみなされます。

KEV に載っている脆弱性の期限を、指令の表1から抜き出すとこうなります。

公開されているか 自動化できるか 技術的な影響 期限
はい はい 完全 3日+侵害調査
はい はい 一部 3日
はい いいえ 完全 3日+侵害調査
はい いいえ 一部 14日
いいえ はい 完全 3日+侵害調査
いいえ はい 一部 14日
いいえ いいえ 完全 14日
いいえ いいえ 一部 14日

日数は暦日で、KEV に追加された日から数えます。KEV に載っていない脆弱性にも同じ表で期限があり、公開されていない機器で自動化もできないものは「次の定期的な更新のときに直す」とされています。

カタログの dueDate は、CISA が手元の情報で公開の有無などを判断して計算した日付です。実装ガイダンスは、公開された機器にあり、完全に制御でき、自動化できると判断した場合は3日の期限になると説明しています。最終的な公開の有無は、機器ごとに各機関が判断することになっています。

実際のカタログでも、2026年6月10日以降に追加された92件の期限は、3日が69件、14日が23件でした。

6月10日以降の追加92件の期限 3日 69件 14日 23件

「3日+侵害調査」が意味すること

表の「侵害調査」(forensic triage)は、期限内に対処したうえで、その機器がすでに侵害されていないかを調べることです。KEV に載っているということは、すでに攻撃に使われているということなので、更新を当てただけでは終わりにしない、という考え方です。

証拠を集めてから更新を当てる

実装ガイダンスは、手順の中で証拠を集めてから更新を当てるよう書いています。更新を当てると、調査に必要な痕跡が失われることがあるためです。

自社の一覧と KEV を突き合わせる

スキャナなどの結果から CVE 番号を取り出せれば、KEV との突き合わせは数行でできます。PowerShell なら次のとおりです。

$kev = Invoke-RestMethod "https://www.cisa.gov/sites/default/files/feeds/known_exploited_vulnerabilities.json"
"catalog: " + $kev.catalogVersion + " count: " + $kev.count
$mine = "CVE-2021-44228", "CVE-2026-85706", "CVE-2024-3094"
$kev.vulnerabilities | Where-Object { $mine -contains $_.cveID } |
  Select-Object cveID, vendorProject, dateAdded, dueDate, knownRansomwareCampaignUse |
  Format-Table -AutoSize

$mine の部分を、自社の一覧から取り出した CVE 番号に置き換えます。2026年9月13日に実行すると、次のように出ました。

catalog: 2026.09.11 count: 1709

cveID          vendorProject dateAdded  dueDate    knownRansomwareCampaignUse
-----          ------------- ---------  -------    --------------------------
CVE-2026-85706 GitLab        2026-09-11 2026-09-14 Unknown
CVE-2021-44228 Apache        2021-12-10 2021-12-24 Known

3件のうち、KEV に載っていたのは2件でした。表示されなかった CVE-2024-3094 は、この時点のカタログには載っていません。

前回の確認以降に追加された分だけを見るなら、日付で絞ります。

$since = "2026-09-06"
$kev.vulnerabilities | Where-Object { $_.dateAdded -ge $since } |
  Select-Object dateAdded, cveID, vendorProject, product

この日付より後に追加されたのは14件でした。確認した日を記録しておき、次回はその日以降だけを見ると、件数が増え続けても運用が続きます。

優先順位の付け方

BOD 26-04 の表は米国の連邦機関に向けたものですが、「公開されているか」「KEV に載っているか」を先に見るという考え方は、そのまま使えます。CISA も、連邦機関以外のあらゆる組織に KEV の脆弱性を優先して対処するよう強く勧めています。

実務では、次の順番で並べると判断がぶれにくくなります。

対処の順番

  1. 1
    KEV に載っていて、インターネットに公開された機器にあるもの

    対処したうえで、侵害されていないかも確かめる

  2. 2
    KEV に載っていて、社内だけで使っている機器にあるもの

    公開された機器の次に対処する

  3. 3
    KEV には載っていないが、公開された機器にあるもの

    EPSS が高い、または CVSS が高いもの

  4. 4
    それ以外

    定期的な更新のときにまとめて直す

「KEV に載っていない=後回しでよい」ではない

KEV は、悪用が確認されたものだけの一覧です。載っていないのは、まだ確認されていないだけかもしれません。KEV は「後回しにできないもの」を決めるための道具で、「無視してよいもの」を決めるための道具ではありません。

もう1つ注意したいのが、スキャナの結果そのものの正しさです。依存ライブラリの lock ファイルは新しいのに、動いているコンテナは古い、ということは珍しくありません。脆弱性スキャナが緑でも本番は古いことがあるにまとめたとおり、突き合わせる前に、一覧が実際に動いているものを表しているかを確かめてください。

KEV のほかに、CVE・NVD・EPSS・JPCERT/CC・JVN・GitHub Advisory Database などをどう組み合わせて情報を集めるかは、脆弱性情報の集め方で整理しています。

実際に KEV に加わった例として、2026年10月29日に追加された GitLab の脆弱性(CVE-2026-97229)があります。修正版が出てから17日で期限付きの一覧に入り、しかも最初の修正版では足りない別の脆弱性が続いていました。対象の確かめ方は GitLab の重大な脆弱性の記事で整理しています。同じ時期に VPN 装置の Ivanti Connect Secure でも、3つの脆弱性の連鎖が KEV に載っています(Ivanti Connect Secure の連鎖攻撃の記事)。修正の公開から KEV に載るまでの日数や期限の違いは、月ごとに 2026年のセキュリティ更新の記録へ追記しています。

よくある質問

日本の企業も KEV の期限に従う義務がありますか

ありません。BOD 26-04 が対象にしているのは米国の連邦政府の文民行政機関です。ただし CISA は、民間を含むあらゆる組織に KEV を脆弱性管理の優先順位付けに使うよう強く勧めています。

KEV はどのくらいの頻度で更新されますか

決まった曜日ではなく、悪用が確認されたものが随時追加されます。2026年は月に17〜31件のペースでした。JSON の dateReleased と catalogVersion で、手元のデータがいつの版かを確かめられます。

EPSS と KEV はどう使い分けますか

KEV は悪用が確認されたという事実、EPSS は今後30日以内に悪用される確率の推定です。まず KEV で「すでに使われているもの」を拾い、残りの中から EPSS で「次に危なそうなもの」を探す、という順番で組み合わせると重なりません。

CVSS が低い脆弱性でも KEV に載りますか

載ります。KEV の条件は深刻さの点数ではなく、悪用の証拠です。BOD 26-04 の表でも、技術的な影響が「一部」のものに3日や14日の期限が付いています。

まとめ

  • KEV は悪用が確認された脆弱性の一覧。CVE 番号・悪用の証拠・対処方法の3条件で載る
  • CVSS の基本値は深刻さ、EPSS は悪用の確率、KEV は悪用の事実。役割が違うので組み合わせて使う
  • 2026年9月11日版は1,709件。ランサムウェアでの利用が確認されたものは360件。開発者が使うサーバーやライブラリも載る
  • 期限は BOD 26-04 の表で決まり、公開された機器を完全に乗っ取られる種類なら3日+侵害調査
  • 自社の CVE 一覧と JSON を突き合わせ、確認した日以降の追加分だけを見る運用にする
  • 載っていないことは安全の証明にならない

参考リンク

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