先に要点
- AdSense の管理画面に出る「完全な IP アドレスを共有して広告の効果を最大化」は、入札リクエストで短縮していない IP アドレスを広告の買い手に渡す設定です。2026年6月1日から提供されています。
- 既定はオフ(ブロック)で、アカウント全体に効きます。サイトごとの切り替えは案内されていません。
- 変わるのは「Google から買い手へ渡すかどうか」だけです。読者のブラウザから Google に IP が届くこと自体は、設定の前後で変わりません。
- パーソナライズなし広告・制限付き広告・制限付きデータ処理のリクエストでは共有されません。Ad Manager のヘルプでは、GDPR が適用されるリクエスト(EEA・英国・スイス)は CTV 以外共有しないとされています。
AdSense の「最適化案」に、完全な IP アドレスを共有して広告の効果を最大化という提案が出ることがあります。「有効」のボタンが並んでいるものの、何がどう変わるのかは、その画面だけでは分かりません。
この記事は、この設定が何をするものなのか、判断するときに何を見ればよいのかを、公式の説明をもとに整理します。内容は2026年9月19日に確認したものです。
この設定が変えること
広告が表示されるとき、AdSense は買い手(認定バイヤー、ディスプレイ&ビデオ 360、Google 広告)に入札リクエストを送ります。この設定は、そのリクエストに短縮していない IP アドレスを含めるかどうかを決めます。
| 設定オフ(既定) | 設定オン | |
|---|---|---|
| 読者のブラウザ → Google | IP アドレスは届く | 同じ(変わらない) |
| Google → 広告の買い手 | 短縮された IP アドレス | 完全な IP アドレス |
つまり、サイト運営者が IP アドレスを預かって誰かに渡す、という話ではありません。読者のブラウザが広告の配信元に直接つながる形は、設定を変えても同じです。
Google は、この設定について「多くの買い手が、広告のインプレッションの品質と関連性を評価するうえで完全な IP アドレスを重要なシグナルと考えている」「インベントリの価値を最大限に高めることができる」と説明しています。収益がどれだけ増えるかの数字は示されていません。
どこにあるか
AdSense の管理画面で、次の順に開きます。
- ブランド保護
- コンテンツ
- ブロックのコントロール
- 広告配信を管理
- 「パーソナライズド広告」の中の「完全な IP アドレスを共有」
ここで注意したいのがトグルの向きです。ヘルプの説明では、トグルをオフにすると共有を許可、オンにすると許可しない(ブロック)という並びになっています。「最適化案」のカードから「有効」を押した場合も、最終的にこの設定が変わります。心配なら、上の画面を開いて今の状態を見てください。
共有されない場面がある
有効にしても、次のリクエストでは完全な IP アドレスは共有されません。
- パーソナライズなし広告(NPA)のリクエスト
- 制限付き広告(LTD)のリクエスト
- 制限付きデータ処理(RDP)のリクエスト
さらに、Google Ad Manager の同じ機能のヘルプでは、GDPR が適用されるリクエスト(EEA、英国、スイス)では、CTV の広告枠でのみ完全な IP アドレスを共有すると説明されています。
読者の同意が無いところには、そもそも渡らない作りだと考えてよい部分です。この設定を有効にしたからといって、同意画面の項目が増えたり、読者の操作が増えたりはしません。
日本のサイトで気になる点
「読者の IP アドレスを第三者に渡すことになるのでは」という不安は自然です。ここは、誰が渡しているのかを分けて考えると整理できます。
個人情報保護委員会の Q&A には、次の質問があります。
A社が自社のウェブサイトにB社のタグを設置し、B社が当該タグを通じてA社ウェブサイトを閲覧したユーザーの閲覧履歴を取得している場合、A社はB社にユーザーの閲覧履歴を提供したことになりますか。
回答は、A社がそのデータを取り扱っていないのであれば「提供」にあたらず、B社が直接取得したことになるため、個人関連情報の第三者提供の規定(法第31条第1項)は適用されない、というものです。
広告タグも同じ形です。IP アドレスは読者のブラウザから配信元へ直接渡っていて、サイト運営者が受け取って渡しているわけではありません。今回の設定は、さらにその先で Google が買い手に何を渡すかの話です。
⚠️ 筆者は法律の専門家ではありません。自社の状況に当てはまるかどうかの最終的な判断は、必要に応じて専門家に確認してください。また、プライバシーポリシーには、Google が求める記載(第三者配信事業者による Cookie の利用、パーソナライズド広告を無効にできること、その案内先のリンクなど)を入れておく必要があります。詳しくはAdSenseのプライバシーポリシーに必ず書く5項目にまとめました。
判断するときに見ること
アカウント全体に効く
ヘルプはこの設定をアカウントの設定として説明していて、サイトごとに切り替える手順は案内されていません。複数のサイトを運用している場合、一部のサイトだけで試すことはできないと考えてください。
効果は前後比較でしか見えない
A/B テストのような比べ方ができないので、切り替えた日付を記録しておき、AdSense のレポートでその前後を比べるのが現実的です。比べるときは、次の点に注意します。
- 季節や曜日で収益は動くので、同じ長さの期間で比べる(直近28日と、その前の28日など)
- 同じ時期に広告の配置や記事の公開ペースを変えていると、原因を切り分けられない
- 表示回数が少ないサイトでは、差がノイズに埋もれる
何を判断しているのか
技術的な影響は「入札リクエストに含まれる情報が増える」ことだけです。最終的な判断は、読者の完全な IP アドレスが広告の買い手にも渡る状態を、運営者として選ぶかどうかになります。ここは各自の方針で決める部分です。
よくある質問
有効にすると、読者に同意を求める画面が増えますか
増えません。同意が無い場合(パーソナライズなし広告など)は、そもそも共有されない作りです。
オフのままだと、広告は表示されなくなりますか
なりません。既定がオフで、その状態でも広告は配信されます。買い手に渡る情報が短縮された IP アドレスになるだけです。
元に戻せますか
同じ画面で戻せます。戻した日付も記録しておくと、収益の比較がしやすくなります。
この設定は AdSense の審査に影響しますか
Google のヘルプに、審査との関係を示す記述はありません。審査で見られているのはサイトの中身です。
まとめ
- この設定は、入札リクエストで完全な IP アドレスを買い手に渡すかどうかを決める
- 既定はオフ。アカウント全体に効く
- ブラウザから Google に IP が届くことは、設定の前後で変わらない
- パーソナライズなし広告・制限付き広告・制限付きデータ処理では共有されない。GDPR 対象のリクエストは CTV のみ
- 効果は切り替え日を記録して前後で比べるしかない