先に要点
- 2枚なら、チャネルAとチャネルBに1枚ずつ分けて挿します。MSI のマニュアルは「最初に DIMMA2 へ挿す」と明記していて、2枚なら DIMMA2 と DIMMB2 です。位置と名前は基板ごとに違うので、最後は自分の基板のマニュアルが優先です。
- 基板の刻印(DIMMA1・DIMMA2)と、Windows が表示するスロット名(ChannelA-DIMM0・ChannelA-DIMM1)は数え始めが違います。筆者の環境で1枚ずつ抜いて確かめた、物理的な位置との対応表を載せます。
- 向きは端子側の切り欠きで決まります。切り欠きは中央からずれた位置にあるので、逆向きや世代違いのメモリは入りません。入らないときは力を足さず、向きと規格を疑います。
- 容量違いを混ぜること自体はできます。条件はチャネルAとBが同じ組み合わせになるように挿すことと、速度・電圧をそろえることです。筆者の環境では 8GB と 16GB を各チャネルに1枚ずつ挿した計48GBで、診断に合格しました。
メモリを買ってきてパソコンのふたを開けると、細長いスロットが4本並んでいます。どこに挿せばいいのか、向きはどちらか、いま入っている古いメモリと混ぜてよいのか。ここで手が止まる人は多いと思います。
この記事は、デスクトップPCでメモリを増設・交換するときの挿す位置、向き、組み合わせを、マザーボードのマニュアルと、筆者の環境で実際に抜き差しして確かめた結果をもとに整理します。題材は Intel Z490 チップセットのデスクトップ(CPU は Core i9-10900K、DDR4、スロット4本)ですが、考え方は DDR5 の機種でも変わりません。
2枚なら、チャネルAとBに1枚ずつ
デスクトップ向けの一般的なマザーボードでは、4本のスロットが2本ずつ2つのチャネルに分かれています。チャネルAに2本、チャネルBに2本です。2枚挿すなら、この2つのチャネルに1枚ずつ分けるのが基本です。
MSI の Z490 マザーボード(MAG Z490 TOMAHAWK)のマニュアルでは、推奨の挿し方が次のように図で示されています。
| 枚数 | 挿すスロット |
|---|---|
| 1枚 | DIMMA2 |
| 2枚 | DIMMA2、DIMMB2 |
| 4枚 | DIMMA1、DIMMA2、DIMMB1、DIMMB2 |
同じページには「メモリモジュールは必ず最初に DIMMA2 スロットへ挿すこと」という注意書きがあります。起動しないときの対処の欄でも、メモリを全部抜いて DIMMA2 に1枚だけ挿して試すよう案内されています。DIMMA2 は、この基板で最初に使う前提の位置だということです。
すでに挿さっているメモリの隣は、同じチャネルのもう1本であることが多いです。そこに挿すと2枚とも同じチャネルに入り、もう一方のチャネルが空になります。見た目の並び順ではなく、チャネルの分かれ方で位置を決めてください。
注意したいのは、この表は MSI の場合だということです。メーカーや機種によって、スロットの呼び名も、どの位置を先に使うかも違います。BTO パソコンでは、市販品と同じメーカーの基板でも専用の型番になっていて、マニュアルが付いていないこともあります。まず自分の基板のマニュアルか、基板上の刻印を確認してください。
基板の刻印と Windows の表示は、数え始めが違う
ここが意外と引っかかるところです。
マニュアルや基板の刻印は DIMMA1、DIMMA2 のように 1から数えます。一方、Windows から見えるスロット名は、筆者の環境では ChannelA-DIMM0、ChannelA-DIMM1 のように 0から数えていました。この名前は Windows が付けているのではなく、マザーボードのファームウェアが報告している値です。Microsoft のドキュメントでは、SMBIOS という仕組みの Device Locator という項目から取っていると説明されています。
いま挿さっているメモリは、PowerShell で次のように確認できます。管理者権限は要りません。
Get-CimInstance Win32_PhysicalMemory | Sort-Object DeviceLocator |
Select-Object DeviceLocator,
@{n="GB"; e={$_.Capacity / 1GB}},
ConfiguredClockSpeed, ConfiguredVoltage, Attributes, PartNumber |
Format-Table -AutoSize
筆者の環境では次のように出ました。
DeviceLocator GB ConfiguredClockSpeed ConfiguredVoltage Attributes PartNumber
------------- -- -------------------- ----------------- ---------- ----------
ChannelA-DIMM0 8 2667 1200 1 HMA81GU6CJR8N-VK
ChannelA-DIMM1 16 2667 1200 2 W4U2666CS-16G
ChannelB-DIMM0 8 2667 1200 1 HMA81GU6JJR8N-VK
ChannelB-DIMM1 16 2667 1200 2 W4U2666CS-16G
| 列 | 意味 |
|---|---|
| DeviceLocator | スロットの名前(ファームウェアが報告するもの) |
| GB | 容量 |
| ConfiguredClockSpeed | 実際に動いている速度(MHz) |
| ConfiguredVoltage | 実際にかかっている電圧(ミリボルト。1200 は 1.2V) |
| Attributes | ランク(1 がシングルランク、2 がデュアルランク) |
| PartNumber | メモリの型番 |
Select-Object に SerialNumber を足すと、1枚ごとのシリアル番号も出ます。見た目が同じメモリを取り違えないために、とても役に立つ列です。ただし個体を特定できる情報なので、質問サイトなどに結果を貼るときは消してください。
名前と物理的な位置の対応は、抜いて確かめた
名前が分かっても、それが基板のどの位置かは表示からは分かりません。筆者の環境では、「CPU に近い側から1本目と3本目を抜く」作業をしたあとに上のコマンドを実行し、どの名前が消えたかで対応を確定させました。
| CPU からの位置 | Windows の表示 |
|---|---|
| 1本目 | ChannelA-DIMM0 |
| 2本目 | ChannelA-DIMM1 |
| 3本目 | ChannelB-DIMM0 |
| 4本目 | ChannelB-DIMM1 |
2枚で使っていた時期は、2本目と4本目(ChannelA-DIMM1 と ChannelB-DIMM1)に挿さっていました。MSI の刻印でいう DIMMA2 は「チャネルAの2本目」、Windows の ChannelA-DIMM1 も「チャネルAの2本目を0から数えたもの」なので、数え始めの違いと考えると辻褄が合います。
ただし、刻印と Windows の表示の対応がメーカーから公式に示されているわけではありません。確実にしたいときは、1枚だけ挿して起動し、どの名前で表示されるかを見るのがいちばん確かです。
向き:切り欠きを合わせれば、逆には入らない
メモリの端子側(金色の接点が並ぶ辺)には、切り欠きが1か所あります。この切り欠きは中央からずれた位置にあり、スロット側の出っ張りと合う向きでしか入りません。
MSI のマニュアルは、切り欠きをスロットに合わせて向きを確認すること、そして正しく合っていれば軽く入るので、無理に押し込まないことを注意しています。
切り欠きの位置はメモリの世代でも違います。Kingston の解説によると、DDR4 の切り欠きは DDR3 と位置が違い、対応していない基板に挿せないようになっています。ピン数も DDR3 の240本に対して DDR4 は288本です。
作業の流れは次のとおりです。
- Windows をシャットダウンし、電源ケーブルを抜く
- 体の静電気を逃がしてから作業する(塗装されていない金属部分に触れるなど)
- メモリは基板の縁を持ち、金色の接点やチップに触れない
- スロット端のラッチ(留め具)を開く。両側にある基板と、片側だけの基板がある
- 切り欠きの位置をスロットの出っ張りに合わせ、まっすぐ上から差し込む
- 両端を均等に押し、ラッチがかかるまで押し込む
最後の一押しにはそれなりの力が要りますが、途中で引っかかって進まないのは向きか規格が違うサインです。ここで体重をかけると、スロットや基板を傷めます。いったん抜いて、切り欠きの位置と、買ったメモリの世代(DDR4 か DDR5 か)、デスクトップ用かノート用かを確かめてください。
ノートPC用のメモリ(SO-DIMM)は形が小さく、DDR4 では260ピンです。デスクトップ用とは物理的に互換がありません。型番の末尾や商品名の「DIMM」「SO-DIMM」で見分けられます。
容量違いを混ぜてもよいか
結論から言うと、混ぜること自体はできます。ただし条件があります。
条件1:チャネルAとBを同じ組み合わせにする
MSI のマニュアルには、デュアルチャネルで安定させるには同じ種類・同じ枚数・同じ容量のメモリにするよう書かれています。これはチャネルAとチャネルBの間の話です。
筆者の環境では、正常な 8GB 2枚と、新しく買った 16GB 2枚で4枚構成にしました。挿し方は次のとおりです。
| チャネル | 1本目 | 2本目 | 合計 |
|---|---|---|---|
| A | 8GB | 16GB | 24GB |
| B | 8GB | 16GB | 24GB |
チャネルAとBが鏡写しの同じ組み合わせになっているので、どちらのチャネルも 24GB でそろいます。同じ型番の2枚を、それぞれのチャネルの同じ位置に入れるのがコツです。
新しい 16GB の2枚を2本目と4本目(2枚のときに使う位置)に入れたのには、もう1つ理由があります。あとで古い 8GB の2枚を抜いても、残った2枚がそのまま正しい2枚構成の位置に残るからです。不具合が出たときの切り分けが、抜くだけで済みます。
条件2:速度・電圧・世代をそろえる
混ぜる前に、仕様を並べて比べます。筆者の環境の場合はこうでした。
| 項目 | 8GB(もともと入っていたもの) | 16GB(買い足したもの) |
|---|---|---|
| 規格 | DDR4-2666 | DDR4-2666 |
| タイミング | CL19 | CL19 |
| 電圧 | 1.2V | 1.2V |
| ランク | シングルランク | デュアルランク |
速度と電圧が一致しているので、4枚とも 2667MHz・1.2V で動いていました(上のコマンドの出力のとおりです)。
メモリの動作速度は、表示の数字ではなく設定で決まります。MSI のマニュアルにも、オーバークロック向けのメモリはモジュール内の情報(SPD)に従って動くため、表示より低い速度で動くことがあり、表示どおりにしたいなら BIOS で設定するよう書かれています。速度の違うメモリを混ぜる場合は、実際に何 MHz で動いているかを上のコマンドで必ず確認してください。
気をつける点:1チャネルに2枚、しかもランク違い
仕様がそろっていても、1つのチャネルに2枚挿す構成は、1枚ずつより条件が厳しくなります。MSI の Z490 マザーボードの仕様表では、オーバークロック時の最高速度が構成ごとに分けて書かれていて、1チャネル1枚・シングルランクの 4800MHz 超に対して、1チャネル2枚・デュアルランクは 4000MHz 超と、いちばん低くなっています。
Intel も第12世代 Core のメモリの案内で、1チャネルに2枚挿すときは同じ型番をそろえるよう求めていて、型番の違うメモリを同じチャネルに混ぜると、目標の速度が保証されず、起動しないこともあると書いています。世代は違いますが、リスクがどちら側にあるかを示す情報として参考になります。
筆者の構成は、まさにこの「1チャネル2枚・ランク違い・型番違い」です。ただし 2666MHz という定格の速度は、上限よりずっと低い位置です。そのうえで、組んだあとに4枚のまま診断をかけて合格を確認しました。条件が厳しい側の構成を選ぶなら、この確認は省かないでください。
Intel の仕様では Core i9-10900K の最大メモリは 128GB です。ところが筆者の環境で基板が報告する上限は 64GB でした。容量の上限は、CPU と基板の小さい方で決まります。基板の上限は次のコマンドでも確認できます(MaxGB の列)。
Get-CimInstance Win32_PhysicalMemoryArray |
Select-Object MemoryDevices, @{n="MaxGB"; e={$_.MaxCapacityEx / 1MB}}
挿したあとに確認すること
1. 容量・位置・速度が想定どおりか
最初のコマンドをもう一度実行します。見るのは次の3つです。
- 挿した枚数だけ行が出ていて、容量の合計が合っているか
- チャネルAとBに同じ容量が並んでいるか
- ConfiguredClockSpeed が、メモリの定格どおりの速度になっているか
2. 起動しないときは、1枚から戻す
起動しない、画面が映らないときは、MSI のマニュアルの案内どおりメモリを全部抜いて、DIMMA2(2枚構成で最初に使う位置)に1枚だけ挿して起動を試します。1枚で起動するなら、残りを1枚ずつ足して、どの時点で止まるかを見ます。
3. 最終的な構成のまま、メモリ診断を1回かける
Windows には最初からメモリ診断が入っています。1枚ずつではなく、実際に使う枚数を挿した状態で、標準のモードで1回かけるのがおすすめです。1枚ずつの合格は、複数枚の構成での合格を保証しないためです(詳しくはブルースクリーンのエラーが毎回違うときの記事に実測値を載せています)。
時間の目安として、筆者の環境の標準モード・1パスでは、16GB で約15分、48GB で約47分かかりました。時間は容量にほぼ比例して伸びます。
4. 交換の直後に出る「予期しないシャットダウン」の記録は慌てない
メモリを交換した直後の起動で、イベントログに Kernel-Power 41(重大)が記録されることがあります。筆者の環境では交換した2回とも記録されましたが、中身を読むとクラッシュではなく、高速スタートアップからの復帰が失敗した記録でした。見分け方はKernel-Power 41 の読み方の記事にまとめています。
よくある質問
1枚だけ挿すときは、どこに挿しますか
マニュアルが指定する最初の位置です。MSI なら DIMMA2 です。1枚ではチャネルが1つしか使われないので、2枚に分けた場合のデュアルチャネルにはなりません。
3枚で使ってもいいですか
マニュアルの推奨表に3枚の組み合わせが載っていない基板があります(上で紹介した MSI の Z490 のマニュアルも、1枚・2枚・4枚だけです)。チャネルAとBの容量がそろわなくなるので、2枚か4枚にする方が無難です。
容量の大きい方と小さい方、どちらを「2枚のときの位置」に入れますか
メーカーからの決まりはありません。筆者はあとで単独でも使いたい方(新しく買った方)を2枚構成の位置に入れました。古い方を抜くだけで、正しい2枚構成に戻せるからです。
相性保証は付けた方がいいですか
仕様を並べて比べたうえで買っても、実際に動くかは挿してみるまで分かりません。店舗が相性保証を用意しているなら、条件(期間や会員登録の要否)を読んだうえで検討する価値はあります。
古いメモリと混ぜるより、全部入れ替えた方がいいですか
切り分けやすさを優先するなら全部入れ替え、容量を優先するなら混在です。混在させるなら、この記事の条件を満たしたうえで、4枚のまま診断をかけてください。どちらを選んでも、問題が出たときに戻せる挿し方にしておくと安心です。
まとめ
- 2枚ならチャネルAとBに1枚ずつ。位置は基板のマニュアルが優先(MSI なら DIMMA2 と DIMMB2)
- 基板の刻印(DIMMA1 から)と Windows の表示(DIMM0 から)は数え始めが違う。確実にするなら1枚挿して表示を見る
- 向きは切り欠きで決まる。途中で止まったら力を足さず、向きと規格を確かめる
- 容量違いはチャネルAとBを同じ組み合わせにし、速度・電圧をそろえれば使える
- 1チャネル2枚・ランク違いは条件が厳しい側。組んだ構成のままメモリ診断を1回かける
参考リンク
- MSI MAG Z490 TOMAHAWK クイックスタート(DIMM スロットの推奨構成とトラブルシューティング)
- MSI PRO X870-P WIFI ユーザーガイド(切り欠きの合わせ方と、無理に押し込まない旨の注意)
- Microsoft Learn:Win32_PhysicalMemory クラス
- Intel:DDR5/DDR4 Memory Module Installation on Intel 600 Series
- Intel:Core i9-10900K 仕様
- Kingston:What is DDR4 Memory?(DDR3 との切り欠き位置・ピン数の違い)
- ブルースクリーンのエラーが毎回違うときは?原因をメモリまで絞り込む手順
- Kernel-Power 41はクラッシュとは限らない|停止コードと電源ボタンの値で原因を読み分ける
- PCが重いとき、買い替え前に見るべきポイントは?
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