ソフトウェア 公開日 2026.04.24 更新日 2026.04.24

NRRとは?既存顧客売上がどれだけ残って増えたかを見る指標

NRRとは何かを、既存顧客からの売上がどれだけ残り、どれだけ増えたかを見るSaaS指標として整理します。100%を超える意味、GRRとの違い、アップセル・ダウングレード・解約との関係、高いのに安心できないケースまで初心者向けに解説します。

最初に: NRRは「新規を除いた既存顧客の伸び方」を見る数字

NRR は、既存顧客からの売上が、一定期間でどれだけ残り、どれだけ増えたかを見る指標です。
英語では Net Revenue Retention と呼ばれ、SaaS ではかなり重要な数字として扱われます。

なぜ大事かというと、SaaS の成長は 新規顧客を取る力 だけでなく、既存顧客が残り、広がる力 でも決まるからです。
新規契約が増えていても、既存顧客が解約やダウングレードで減っているなら、事業の土台は弱いままです。

NRR はそこを見ます。
つまり、新しく入ってきた顧客を除いて、もともといた顧客の売上がどう変わったか を見る指標です。

この記事では、2026年4月24日時点で Stripe の NRR / subscription analytics 関連情報を中心に確認しながら整理しています。

NRRとは何か

NRR は、期間の最初にいた既存顧客の売上を100として、その顧客群が期間の終わりにどれだけの売上を残しているかを見る指標です。
ここで大事なのは、新規顧客の売上は入れない ことです。

たとえば、年初にいた顧客群からの月次売上が100万円だったとします。
その後、同じ顧客群の中で

  • 解約で10万円減った
  • ダウングレードで5万円減った
  • アップセルで20万円増えた

なら、最終的な既存顧客売上は105万円です。
この場合、NRR は 105% です。

計算のイメージ

Stripe の解説でも、NRR は既存顧客の期首売上を基準に、解約・ダウングレード・アップグレードなどを反映して計算する考え方で整理されています。

ざっくりした形は次です。

NRR = (期首の既存顧客売上 - 解約で失った売上 - ダウングレードで減った売上 + アップセルや拡張で増えた売上)
      ÷ 期首の既存顧客売上 × 100

ここでのポイントは、新規顧客売上は入れない ことです。
NRR は新規獲得の勢いではなく、既存顧客基盤の強さを見るための数字だからです。

100%を超えると何を意味するのか

NRR が 100% を超えるということは、既存顧客だけで見ても売上が増えているということです。
つまり、解約やダウングレードで減った分を、アップセル、クロスセル、利用拡大、価格改定などが上回っています。

たとえば

  • 解約で少し減る
  • 一部顧客はプランを下げる
  • でも残った顧客がより多く使う
  • 上位プランへ移る

という流れが起きれば、NRR は 100% を超えます。

SaaS でよく 既存顧客だけで伸びている と言うときは、この状態を指していることが多いです。

100%未満だと何が見えるのか

100%未満なら、既存顧客ベースでは売上が縮んでいます。
新規獲得で全体売上が増えていても、既存顧客基盤そのものは削れているかもしれません。

この状態では、成長が 新規営業や広告に依存している ことがあります。
すると、獲得効率が悪化した瞬間に伸びが止まりやすくなります。

だからこそ、NRR は 今の売上 だけでは見えない土台の強さを見る数字として使われます。

NRRとGRRの違い

ここはかなり重要です。

GRR

GRRGross Revenue Retention で、既存顧客売上がどれだけ残ったかを見る指標です。
ただし、アップセルや拡張売上は含めません。

つまり GRR は、純粋にどれだけ失っていないか を見る数字です。

NRR

一方の NRR は、アップセルや拡張も含めます。
そのため、既存顧客からの売上が広がっていれば 100% を超えることがあります。

ざっくり言うと

  • GRR = 守れているか
  • NRR = 守りつつ広がっているか

を見るイメージです。

解約率との違い

解約率 は、どれだけ顧客や売上が離れたかを見る数字です。
一方、NRR は 離脱 だけでなく 拡張 まで含めて、最終的に既存顧客売上がどうなったかを見ます。

そのため、解約率だけでは分からないことが見えてきます。

解約率は悪くないのにNRRが弱い

ダウングレードが多い、利用量が落ちている、拡張が弱い、という可能性があります。

解約率はあるのにNRRは高い

一部顧客は離れていても、残った顧客の拡張がかなり強い可能性があります。

NRRが高いのに安心できないケース

ここはかなり大事です。
NRR は強い指標ですが、高ければ何でもよいわけではありません。

1. 一部大口顧客の拡張だけで押し上がっている

全体では 120% でも、実際には1社の大型アップセルがほとんどを占めていることがあります。
この場合、基盤全体が強いとは言い切れません。

2. 価格改定だけで上がっている

単価アップで NRR が上がること自体は悪くありません。
ただし、価格改定後の満足度や継続が伴っていないと、後から解約で跳ね返ることがあります。

3. 小口顧客が多く離れている

大口顧客の拡張で NRR は高くても、小口顧客のロゴチャーンが高いと、市場への広がりや導入初期の価値提供に課題があるかもしれません。

4. involuntary churn を放置している

決済失敗起因の売上減少は、プロダクト価値とは別の問題です。
請求運用で防げる減少を放置すると、本来もっと高い NRR を取りこぼします。

NRRを見るときに一緒に見たい数字

1. GRR

NRR が高くても、GRR が弱いなら 守りは弱いが拡張で補っている 状態かもしれません。

2. 解約率

どれだけ離れているかを分けて見る必要があります。
NRR は結果の集約なので、原因を見るには churn を分けるほうが分かりやすいです。

3. リテンション

特に利用定着が弱いと、拡張より先に縮小が起きます。
導入初期のリテンションや活用率を見ると、将来の NRR の弱さを早めに拾いやすくなります。

4. アップセル率、ダウングレード率

NRR を構成している内訳です。
一つの数字だけ見ても、なぜそうなったかは分かりません。

5. セグメント別の差

  • プラン別
  • 顧客規模別
  • 契約年数別
  • 流入元別

で見ないと、改善の打ち手がぼやけます。

SaaSでどう使うか

NRR は、経営や営業だけの数字ではありません。
実際には、プロダクト、オンボーディング、サポート、カスタマーサクセス、請求運用の結果が全部集まります。

たとえば NRR を上げるには、次のような改善が効きます。

  • 初回価値到達を早くする
  • 継続利用される機能を強くする
  • 上位プランへ自然に広がる設計を作る
  • 利用量拡大の余地を見つける
  • ダウングレード理由を減らす
  • 支払い失敗を回収する

最初に押さえるべきか

最初は次の5つで十分です。

  1. NRR は、新規を除いた既存顧客売上の残り方と増え方を見る数字
  2. 100%超なら、既存顧客だけで見ても売上が伸びている
  3. 100%未満なら、既存顧客基盤は縮んでいる
  4. GRR は守り、NRR は守りと拡張の両方を見る
  5. NRR だけで判断せず、解約率リテンションアップセル内訳も見る

まとめ

NRR は、既存顧客からの売上がどれだけ残り、どれだけ増えたかを見る SaaS の重要指標です。
新規顧客を除いて見るので、顧客基盤そのものの強さが見えやすくなります。

特に、100%を超えているなら、解約やダウングレードを上回る拡張が起きている状態です。
ただし、その背景が一部大口顧客だけなのか、価格改定なのか、広く健全に伸びているのかは別途見分ける必要があります。

NRR は強いですが、単独では万能ではありません。
GRR解約率リテンション と合わせて見ると、SaaS の継続成長がかなり立体的に見えてきます。

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  1. 解約率とは?SaaSでチャーンをどう見るのか
  2. リテンションとは?サービスが使われ続けているかを見る基本
  3. LTVとは?顧客1人あたりの価値をどう見る指標なのか
  4. カスタマーサクセスとは?導入後に顧客が成果を出すための仕事
  5. PMF(Product Market Fit)とは?顧客に求められている状態を見極める基本

参考リンク

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