先に要点
- Heroku(ヘロク)はコードを push するだけでアプリが公開できる老舗の PaaS で、インフラ管理を肩代わりしてくれる点が最大の価値です。
- 2022年11月28日に無料プランを全廃し、現在は最小でも Eco dyno が月額5ドルから。Postgres や Key-Value Store も別課金で、月5ドルからの有料サービスです。
- 使いどころは「プロトタイプや小〜中規模アプリを、インフラに人手をかけずに最速で動かしたい」案件。逆にコストと自由度を重視する大規模運用では避ける判断もあり得ます。
- 無料枠が必要なら Railway・Render・Fly.io、フロント主体なら Vercel が有力な代替です。
「Heroku って結局何ができるサービス?」「無料じゃなくなったと聞いたけど今いくらかかる?」——この記事は、そうした検索意図をまとめて解消するための実務ガイドです。Heroku の概要・使いどころ・2026年6月時点の料金・無料プラン廃止の経緯・代替サービスまでを、案件でどう判断するかという視点で一気に整理します。
Herokuとは何か
Heroku(ヘロク)は、2007年に登場し現在は Salesforce 傘下にある PaaS(Platform as a Service)です。PaaS とは、サーバーの構築・OS の更新・ロードバランサーの設定といった土台部分をすべてプラットフォーム側が用意し、開発者はアプリのコードだけに集中できるサービス形態を指します。Heroku はこのカテゴリの草分けであり、後発の多くのデプロイ基盤が Heroku の体験を手本にしてきました。
使い方の中心はとてもシンプルです。git push heroku main のようにGit でコードを送ると、Heroku がアプリの言語を自動で判別し、依存パッケージを解決し、ビルドして公開まで実行します。サーバーに ssh でログインして環境を作る作業がほぼ不要で、これが「コードを push するだけで動く」と言われる理由です。実行単位は dyno(ダイノ)と呼ばれる軽量コンテナで、アプリのプロセスはこの dyno の中で動きます。
dyno(ダイノ)
アプリを動かすコンテナの実行単位。Web リクエストを受ける web dyno と、バックグラウンド処理を担う worker dyno に分けるのが基本構成です。
Buildpack(ビルドパック)
言語ごとのビルド手順をまとめた仕組み。Node.js・Ruby・Python・Java・Go・PHP などを公式サポートし、Dockerfile でのデプロイも選べます。
アドオン
PostgreSQL・Redis 系の Key-Value Store・メール送信・監視などを、ワンコマンドでアタッチできる拡張群です。
できること・主な機能
Heroku が肩代わりしてくれる範囲は広く、おおまかに次の通りです。
- Git ベースの自動ビルドとデプロイ(GitHub 連携で push 時の自動デプロイも可能)
- dyno の水平スケール(数を増やす)と垂直スケール(サイズを上げる)
- Heroku Postgres による管理されたデータベース、自動バックアップ
- Heroku Key-Value Store(旧 Heroku Redis)によるキャッシュ・キュー
- 環境変数(Config Vars)での設定管理、ログの集約(
heroku logs --tail) - Review Apps・Pipelines・Heroku CI による CI/CD ワークフロー
つまり Heroku は単なる「アプリ置き場」ではなく、デプロイからデータベース、CI までを一貫して面倒見るプラットフォームです。Docker を使い込まなくてもコンテナ運用の恩恵が受けられる点も、初学者から小規模チームに支持されてきた理由です。
Herokuの使いどころ
公式の言い換えで終わらせず、実際にどんな案件で選び、どんな案件で避けるかを具体的に書きます。判断軸は「インフラに人手をかけたくないか」「トラフィックとコストの規模」「自由度(root 権限・OS 制御)が必要か」の3点です。
| シーン | Heroku の向き不向き | 理由 |
|---|---|---|
| プロトタイプ・MVP の検証 | とても向く | push だけで公開でき、Postgres も即アタッチ。検証スピードが最優先の段階に最適。 |
| 社内ツール・小規模 Web アプリ | 向く | 運用担当者がいなくても回せる。Basic dyno 1〜2本で十分なケースが多い。 |
| Ruby on Rails・Django などのモノリス | 向く | 歴史的に相性が良く、ドキュメントやアドオンが充実。 |
| トラフィックが大きい商用サービス | 要検討 | dyno を増やすほど単価が効いてくる。同じ性能を素の VPS / クラウドで組むより割高になりやすい。 |
| OS レベルの細かい制御が必要 | 避ける | dyno は隔離環境で root 操作や任意ミドルウェア導入に制約がある。IaaS や自前コンテナ基盤が適する。 |
| 無料で動かし続けたい個人開発 | 避ける | 無料プランは廃止済み。最小でも月5ドルかかるため、無料枠のある代替が向く。 |
実務でのつまずきポイントも押さえておきましょう。Eco dyno は30分アクセスが無いとスリープし、次のアクセスで起動に数秒かかる「コールドスタート」が起きます。常時稼働が前提のサービスでは Basic 以上を選ぶ必要があります。また dyno のファイルシステムは揮発性(ephemeral)で、再起動やデプロイのたびに書き込んだファイルが消えます。アップロード画像などは S3 のような外部ストレージに逃がすのが定石です。
Herokuの料金プラン(2026年6月時点)
ここが最も検索される論点です。料金は変動するため、最新は必ず公式の料金ページで確認してください。本記事の数値は2026年6月時点で確認したものです。Heroku の課金は大きく「dyno(実行コンテナ)」と「データサービス(DB やキャッシュ)」が別建てで、合算が請求額になります。
dyno の料金
| プラン | 月額の目安 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| Eco | 5ドル(全 Eco dyno 合計で1,000時間) | 30分無通信でスリープ、水平スケール不可 | 趣味・検証・たまに動かすボット |
| Basic | 7ドル(dyno ごと) | 常時稼働でスリープしない、水平スケール不可 | 常時公開の小規模アプリ |
| Standard-1X | 25ドル(dyno ごと) | 水平スケール可、メトリクスなど機能フル | 本番運用の入口 |
| Standard-2X | 50ドル(dyno ごと) | Standard-1X の倍のメモリ | メモリを要する本番 |
| Performance-M / L | 250ドル / 500ドル(dyno ごと) | 専有リソースの高性能 dyno | 高トラフィック・大規模 |
注意点として、Eco の1,000時間は「アカウント内のすべての Eco dyno で共有」です。Eco dyno を3本動かせば消費も3倍速くなります。Basic 以上は dyno 1本ごとの課金で、本数を増やせばその分加算されます。Eco・Basic・Standard-1X は素の処理性能はほぼ同じで、違いは主に機能制限(水平スケールやメトリクスの可否)にあります。
データサービスの料金
無料 Postgres・無料 Redis も廃止されており、こちらも有料です。2026年6月時点での目安は次の通りです。
| サービス | エントリープラン | 月額の目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Heroku Postgres | Essential-0 | 5ドル前後 | 行数に上限あり。Essential-1(9ドル前後)/ Essential-2(20ドル前後)と段階的 |
| Heroku Postgres(本番) | Standard-0 | 50ドル前後〜 | 本番向けの最初のティア |
| Heroku Key-Value Store(旧 Redis) | Mini | 3ドル前後〜 | 小容量。実用ティアはこれより上 |
つまり「Web アプリ+DB」を常時公開する最小構成でも、Basic dyno 7ドル+Essential Postgres 5ドルで月12ドル前後からというのが現実的なラインです。料金体系は再編が続いているため、上記はあくまで目安として、契約前に公式の料金ページで最新額を確認してください。
無料プラン廃止の経緯
かつて Heroku は「無料 dyno+無料 Postgres+無料 Redis」で個人開発者の定番でした。その無料枠がなぜ無くなったのか、時系列で押さえておくと代替選びの判断にも効きます。
廃止の主因として Heroku が挙げたのは、無料枠を悪用する不正・フラウド対応に多大な労力がかかっていたこと、そして無料プランを収益に結びつけにくくマージンを圧迫していたことです。背景には Salesforce 傘下でのエンタープライズ重視への方針転換があります。現在の Heroku は新機能を積極的に追加するフェーズというより、安定運用・保守を重視する局面に入っているとされ、最新世代ランタイム「Fir」も主に Private Spaces(エンタープライズ向け)での提供です。
なお学生には救済策があり、GitHub Student Developer Pack 経由で申請すると、月13ドル相当のクレジットを最大24か月(合計312ドル相当)受け取れる枠が用意されています。学習用途なら実質無料に近い形で使える場合があります(条件は変動するため公式で確認してください)。
Herokuのメリット・デメリット
メリット
運用担当者を置けない小規模チームでも本番を回せる。学習コストが低く、新メンバーのオンボーディングが速い。
デメリット
無料枠が無い。OS レベルの自由度に制約があり、ファイルシステムが揮発性。常時稼働には Basic 以上が必要。
Herokuの代替サービスと使い分け
無料プラン廃止以降、Heroku の体験を引き継ぐ代替が複数育っています。案件の性質で選び分けるのが実務的です。
| サービス | 立ち位置 | Heroku の代わりに選ぶ場面 |
|---|---|---|
| Railway | Heroku に近い操作感の PaaS | 無料的に試したい個人開発・少額から始めたいバックエンド。UI と DX が現代的。 |
| Render | Web サービス+DB+Cron を統合した PaaS | 常時稼働の Web アプリや API を、Heroku より低コストで運用したいとき。 |
| Fly.io | エッジ寄りのコンテナ実行基盤 | 世界各地に近い拠点で動かしたい・低レイテンシ重視のアプリ。 |
| Vercel / Netlify | フロントエンド主体のデプロイ基盤 | Next.js などのフロント+API を中心に置くプロジェクト。 |
| Cloudflare 系 | エッジ+帯域に強い基盤 | 静的配信や帯域コストを抑えたいケース。 |
ざっくりした使い分けの指針はこうです。「Heroku の手軽さをそのまま安く欲しい」なら Railway か Render、「フロントエンド中心で API も少し」なら Vercel、「グローバル分散や低レイテンシ」なら Fly.io。フロント主体のデプロイ基盤を横断的に比べたい場合は、Vercelと他デプロイ基盤の違いは? で Render・Fly.io・Railway なども含めて整理しているので、そちらと合わせて読むと判断材料が増えます。
逆に、すでに Heroku でドキュメントとアドオンの恩恵を受けていて運用が安定しているなら、無理に乗り換える必要はありません。移行にはコストもリスクも伴うため、「月額がいくら膨らんだら別基盤を検討する」という閾値を先に決めておくのが現実的です。
Herokuに関するよくある質問
Q. Heroku は今でも無料で使えますか
A. 使えません。2022年11月28日に無料プラン(dyno・Postgres・Redis)が廃止されました。現在は最小でも Eco dyno が月5ドル前後からで、DB を足すとさらに加算されます。無料で動かしたい場合は Railway や Render などの無料枠がある代替を検討してください。
Q. Eco と Basic と Standard の違いは何ですか
A. 素の処理性能は近いですが、Eco は30分無通信でスリープし水平スケール不可、Basic は常時稼働だが水平スケール不可、Standard 以上で dyno を複数並べる水平スケールやメトリクスなどの機能がフルに使えます。常時公開なら Basic 以上、本番でスケールするなら Standard 以上が目安です。
Q. 最小構成だと月いくらかかりますか
A. 目安として、常時稼働の Web アプリ+DB なら Basic dyno(7ドル前後)+Essential Postgres(5ドル前後)で月12ドル前後からです。アドオンや dyno 本数で増減します。最新額は公式の料金ページで確認してください。
Q. なぜ無料プランは廃止されたのですか
A. 無料枠の不正利用対応に多大な労力がかかっていたこと、収益化が難しくマージンを圧迫していたことが主因とされます。背景には Salesforce 傘下でのエンタープライズ重視への方針転換があります。
Q. dyno がスリープすると何が起きますか
A. Eco dyno は30分アクセスが無いとスリープし、次のアクセスで起動に数秒のコールドスタートが発生します。常時応答が必要なサービスではスリープしない Basic 以上を選んでください。
Q. アップロードしたファイルが消えるのはなぜですか
A. dyno のファイルシステムは揮発性(ephemeral)で、再起動やデプロイのたびに初期化されるためです。画像などの永続保存は S3 のような外部ストレージに逃がすのが基本です。
Q. 学生はお得に使えますか
A. GitHub Student Developer Pack 経由で申請すると、月13ドル相当のクレジットを最大24か月(合計312ドル相当)受け取れる枠があります。学習用途なら実質無料に近く使える場合があります。条件は変動するため公式で確認してください。